これで見えた!生活相談員の機能と役割10選

てんぱまる
この記事の著者
業界20年目になる特養の施設長。
地域密着型サービス外部評価調査員・実務者研修講師としても活動中。
保有資格はすべて一発合格。

【保有資格】
社会福祉士/介護福祉士/保育士/幼稚園教諭二種免許状/公認心理師/第一種衛生管理者/主任介護支援専門員

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てんぱまる
てんぱまる

みなさんどうもこんにちは。

元介護士で、現役ソーシャルワーカー×心理師の「てんぱまる@tenpa_mal」です。

「介護職は、ケアで生活を支える人」「医師は、診断・治療・薬の処方で身体を治す人」「機能訓練指導員は、リハビリで機能回復を助ける人」などと、機能や役割が明確です。

では、「生活相談員は?」と聞かれて、明確に答えることができる方は少ないでしょう。

なぜなら、「何でも屋」とも呼ばれるように、生活相談員が行う業務は多岐にわたるからです。

また、業務内容は事業所の規模や生活相談員個人の特性によって異なるなど、「生活相談員の業務」として統一されたものがあるわけではありません。

これらの理由から、生活相談員は他の専門職に比べて、機能や役割が分かりにくく、言語化しにくい職種であると言えます。

「生活相談員の機能と役割」を一言で表すなら、「ソーシャルワークをする人」と表現できます。

しかし、「ソーシャルワーク」という言葉からだけでは、機能や役割が見えてきません。

今回の記事では「生活相談員の機能と役割」について明確化し、丁寧にお伝えしていきます。

「初めて生活相談員になった方」や「生活相談員を目指している学生」に対して、とても有益で参考になる内容となっています。

また、私と同じ「現役生活相談員」のみなさんにとっても、自分の業務を振り返る良い機会となるはずです。

目次

生活相談員の任用要件

まずは、「生活相談員の法的位置付け」から確認していきましょう。

生活相談員の任用要件は、「社会福祉主事任用資格」「社会福祉士」「精神保健福祉士」をはじめ、「各規定の大学や養成機関を終了した者」とされています。

また、自治体によっては「介護支援専門員(ケアマネジャー)」「介護福祉士」「社会福祉事業に一定期間従事した者」なども同等以上の能力を有すると認められており、生活相談員は、様々な経験や背景の人が従事しています。

したがって、生活相談員の「ソーシャルワーク教育」はバラつきがあり、利用者支援に対する考え方や日常の業務に向き合う姿勢・視点が統一されているとは言い難い現状があります。

私は「介護福祉士」「介護支援専門員(ケアマネジャー)」の経験を10年経て、生活相談員となりました。

よって、体系的に「ソーシャルワークの価値・知識・技術」を学んだ時期は、介護現場を経てからであったため、「ケアワーカー(スペシャリスト)」から「ソーシャルワーカー(ジェネラリスト)」への舵取り、いわゆる「パラダイムシフト」ができるようになるまでには、とても時間がかかり苦労しました。

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介護保険制度における生活相談員の業務

生活相談員の業務は、利用者との面接相談・契約から始まり、サービス担当者会議への参加、サービス利用中の生活相談、家族との情報共有や意向の伝達、地域との連携・調整、リスクマネジメント、苦情解決、ボランティアの受け入れ、実習生への指導など様々です。

  • 利用者との面接相談・契約
  • サービス担当者会議への参加
  • サービス利用中の生活相談
  • 家族との情報共有や意向の伝達
  • 地域との連携・調整
  • リスクマネジメント
  • 苦情解決
  • ボランティアの受け入れ
  • 実習生への指導 など

これらの業務は、生活相談員の中核業務と位置付けられていますが、介護保険制度の導入以降は、ケアプラン(個別援助計画)作成への助言や協力、看取りに関わる利用者(本人)・家族の意思決定に関する相談支援、サービスの質の向上に向けた取り組み、成年後見人制度の利用に関する支援、個人情報保護、第三者評価への対応なども業務として含まれるようになりました。

  • ケアプラン(個別援助計画)作成への助言や協力
  • 看取りに関わる利用者(本人)・家族の意思決定に関する相談支援
  • サービスの質の向上に向けた取り組み
  • 成年後見人制度の利用に関する支援
  • 個人情報保護、第三者評価への対応 など

特養の生活相談員は、介護支援専門員(ケアマネジャー)と兼務している実情が多く、ケアプランの作成を含めたケアマネジメントについても、すべて生活相談員が担っているという施設も、珍しくありません。

生活相談員に期待されている業務内容は、制度改正や社会の求めに応じて今後も変化し、拡大していくことも考えられることから、制度改正や介護報酬改定などの動向には、注意しておく必要があります

社会福祉士のソーシャルワーク機能

最初にお伝えした通り、生活相談員は「ソーシャルワークをする人」です。

ソーシャルワーク専門職の機能については、様々な文献で諸説述べられていますが、「社会福祉士のソーシャルワーク機能」のなかで、分かりやすく示されたものがあるためご紹介します。

「社会福祉士」は生活相談員の任用資格の一つで、ソーシャルワーク専門職です。

「社会福祉士のソーシャルワーク機能」は、生活相談員の機能と役割を理解するうえで、とても重要な要素であるため、しっかりとイメージしておくことが大切です。

図1 社会福祉士のソーシャルワーク機能
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生活相談員の機能と役割

上記のように、ソーシャルワーク専門職は、それぞれの実践現場に応じて、業務内容や主として発揮する機能が異なります。

特養やデイサービスなどの生活相談員は、主に利用者の生活課題の解決に向けた支援を行うため、領域特有の機能や役割も求められます。

様々な文献や、私の生活相談員経験を踏まえると、介護事業所における「生活相談員の機能と役割」は、下記の10項目に整理することができます。

図2 生活相談員の機能と役割

意思決定支援(ミクロレベル)

利用者本位のサービス提供を行うために、利用者本人が自ら意思を決定し、選択することを促す支援機能です。

要介護高齢者のなかには、自分の意思を適切に表出できず、解決する方法を見いだせない状況に陥っている人がいます。

生活相談員には、そのような人に不利益が生じないよう共感理解を図り、自らの意思決定を後押しする役割があります。

特に特養のような要介護度が高い人となれば、意思決定ができない場合が多くあります。その場合は,、ご家族と多職種が、繰り返し話し合いを行い、「本人だったらどうするのか?」という推定意思に沿った支援が求められます。

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擁護的支援(ミクロレベル)

利用者の人権侵害に及ぶリスクを回避するとともに、すでに侵害されている権利を回復・養護する機能です。

要介護状態となることで、本来は尊重されなければいけない権利が侵されてしまう場合があります。

誰かの支援がなければ生活できない利用者は、社会的弱者として、管理されてしまう傾向があります。

生活相談員には、利用者の最も身近な擁護者として、当事者視点に立った支援を行う役割があります。

代弁(ミクロレベル)

利用者が家族や他の専門職等に自分の気持ちを伝えられない状況において、利用者の代わりに意向や想いを伝えることで、互いの意思を共有し、理解を深め、受容へと繋げる機能です。

生活相談員には、様々な理由で意思疎通が困難となった利用者本人と家族、介護現場の間に立ち、関わりの中から知り得た本人の意向や想いを代弁して伝える役割があります。

連携・調整(メゾレベル)

利用者が抱える様々なニーズに対して、利用者とその周辺にどのような問題が生じているのかを探り、関係者を巻き込みながら支援の道筋を検討していく機能です。

利用者自身と生活環境の間に様々な問題が発生し、生活上の困りごとや対人トラブルへと発展していることも少なくありません。

連携・調整は専門職とだけではなく、様々な関係者(ひと)、物(もの)、場所、組織、制度等も含めて考えることが求められます。

生活相談員には、利用者本人が持ち合わせている自助力(エンパワメント)を引き出しながら、様々な関係者との連携(ネットワーキング)と調整(コーディネート)を行う役割があります。

情報収集・提供(メゾレベル)

様々な情報を意図的に集めて統合化を図り、必要とする利用者や関係者に伝える機能です。

利用者一人ひとりの健康状態や生活機能を考慮した支援を行うためにも、個人情報を取り扱うことは避けられません。

関係する他機関や他職種に「どの程度の内容を伝えるべきか?」「どのタイミングで伝えるべきか?」「誰に伝えるべきか?」「相手からどのような情報が知りたいか?」等を事前に整理しておくことが必要です。

生活相談員には、様々な情報を意図的に収集し、適切な内容・タイミングで、必要な相手へ提供する役割があります。

運営管理(メゾレベル)

各部署へ横断的に関わり、事業所の運営者(管理者)側と現場スタッフ側の橋渡し役となり、総括的に事業所運営に携わるジェネラリストとしての機能です。

事業所は、複数の専門職と部署等で運営されていることから、それぞれが全く違う方向で業務を進めてしまうと、組織の方針が徹底されず、結束力が不足します。

生活相談員には、中間管理職という立ち位置で、事業所の運営面に関する重要事項を現場スタッフへ伝えたり、現場の状況を運営者側に報告・相談するなかで、運営管理の舵取りを行う役割があります。

危機管理(メゾレベル)

事業所のリスクを把握し、危機管理(リスクマネジメント)を行う機能です。

介護現場には、人が人を介護するという性格上、様々なヒューマンエラーが考えられます。

どんなに気を付けていてもリスクをゼロにするのは難しいことから、介護事故は発生するものとして考えたうえで「どのような回避策が講じれるか?」という点に重きを置きます。

生活相談員には、事業所のリスクを把握し、率先して事故予防に取り組む役割があります。

サービスチェック(メゾ・マクロレベル)

事業所のサービスの質をチェックする機能です。

特養やデイサービスでは、事業所として、サービスの質の向上に取り組むことが求められています。

また、介護保険制度において、事業所は利用者や家族から選択される立場であり、法令順守(コンプライアンス)やサービスの質の向上を図る必要があります。

生活相談員には、事業所のサービスの質を俯瞰してチェックし、質の向上へと働きかける役割があります。

ソーシャルサポートネットワーク(マクロレベル)

利用者に必要な社会資源を結び付けることで、多面的な支援を新たに創出し、利用者の自助力(エンパワメント)を活かした解決に繋げていく機能です。

生活相談員は、役職や立場によって、行うことが異なります。

対象がミクロ(利用者・家族)ということもあれば、メゾ(地域住民)ということもありますが、支援展開の土台となる価値・知識・技術は共通しています。

生活相談員には、ソーシャルワーク専門職としての繋がりを駆使し、フォーマルサポートのみならず、インフォーマルなサポートの活用を視野に入れ、マクロ(地域・社会全体)な視点で支援を行う役割があります。

地域との連携・調整(マクロレベル)

地域の特性やニーズをアセスメントし、地域の関係者と「顔の見える関係」を構築する機能です。

特養やデイサービスを運営する社会福祉法人は、地域に対して公益的な取り組みを行うことが求められています。

「認知症カフェ」「介護技術講座」「ゴミ拾い」「災害時の相談拠点」など、コロナ禍で制限があるなかでもオンライン等を活用し、それぞれ工夫を凝らし、地域の特性やニーズに合わせた取り組みが行われています。

生活相談員には、地域に対する相談窓口として、日頃から地域の専門職や機関と連絡を取り合い、良好な関係作りを進める役割があります。

私が生活相談員として難しいと感じる機能や役割は「マクロレベル」の視点が必要な業務です。

一方、私のように介護の現場からではなく、ソーシャルワークを体系的に学び、そこから生活相談員となった方については、反対に「ミクロレベル」の視点が必要な業務に対し、難しさを感じる方もいらっしゃるかもしれません。

まとめ

「社会福祉士のソーシャルワーク機能」は、「生活相談員の機能と役割」の土台となっています。

漫然と業務にあたるのではなく、機能や役割に対する理解を深め、日常的に意識しながら業務にあたることが、より良いソーシャルワークへと繋がり、優れた生活相談員となる所以だと思います。

この記事を参考にし、生活相談員の機能や役割を十分に発揮して欲しいと願います。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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