丸わかり!生活相談員に必要な対人援助の基礎5選

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てんぱまる
この記事の著者
業界19年目の元介護職。
現在は特養の生活相談員・ケアマネジャー。
地域密着型サービス外部評価委員・実務者研修講師としても活動中。

【保有資格】
社会福祉士|介護福祉士|保育士|公認心理師|主任介護支援専門員
マルチーズが好き。
てんぱまる
てんぱまる

みなさんどうもこんにちは。

元介護士で、現役ソーシャルワーカー×心理師の「てんぱまる@tenpa_mal」です。

生活相談員とは、特別養護老人ホーム(以下「特養」と表記)やデイサービスなどに配置義務のあるソーシャルワーク専門職です

ソーシャルワーク専門職ですが、対象となる方が高齢者であるため、「高齢者の特性を考慮する必要があること」「生きづらさなどの生活課題に向き合うこと」が多いなどの特徴があります。

私は特養の生活相談員に従事し、今年で7年目を迎えます。

これまで生活相談員として業務を行ってきた過程で、「生活相談員に必要な専門性って何だろう?」と、思い悩むことが多くありました。

介護・福祉に関連する職業の方であっても、「生活相談員はどんな職業?」という問いに対し、明確に答えることができる方は少ないかもしれません。

また、私と同じ生活相談員であっても、「専門性がよくわからない」と、同じような悩みを抱いている方は多いのではないでしょうか。

今回は「生活相談員に必要な対人援助の基礎」について、丁寧にお伝えします。

「初めて生活相談員になった方」や「生活相談員を目指している学生」に対して、とても有益で参考になる内容となっています。

また、私と同じ「現役生活相談員」のみなさんも、自分の専門性を振り返る良い機会となるはずです。

目次

ソーシャルワーク専門職としての意識

「対人援助の基礎」に触れる前に、まずは、ソーシャルワーク専門職の土台となる「ソーシャルワークの価値」「知識」「技術」「態度」についてお伝えします。

「価値」を広辞苑で調べると「物事の役に立つ性質・程度。個人の好悪とは無関係に、『よい』として承認すべき普遍的な性質。真・善・美など」と書かれています。

生活相談員にとっての「価値」とは、「ソーシャルワーカーとして専門性を身に着けた人間性のこと」になります。

「ソーシャルワークの価値」は、利用者(本人)本位の対人援助であり、本人の最善の利益を追求することになります。

そして、「ソーシャルワークの価値」を基盤に展開するうえで必要となるのが、「知識」「技術」「態度」になるのです。

「知識」とは、生活相談員が業務を行うにあたり必要となるものです。福祉の「知識」のみならず、医療・介護・心理などの他、その時々で必要とされるあらゆる分野に及びます。

学び得た「知識」は、本人や多職種との相互関係のなかで、利用者(本人)本位の支援を展開するために活かしていきます。

「技術」とは、本人のニーズ解決に向けて、「知識」を効果的に活用し、働きかける術のことです。

そして「態度」とは、利用者本人の立場になり、相手の感情を受容しながらコミュニケーションを図り、伴走車として寄り添う姿勢のことです。

生活相談員も一人の人ですが、業務を行う際は一個人ではなく、「ソーシャルワークの価値」を基盤としたソーシャルワーク専門職として、業務を行います。

みなさんに強くお伝えしたいポイントは、「ソーシャルワークの価値」は「知識」「技術」「態度」と並列(横並び)ではなく、土台の部分であるということです。

つまり、「価値」という土台の上に「知識」「技術」「態度」が成り立つということです。

どんなに沢山の道具(知識や技術)があっても、使い方を間違えると、良い仕事はできません。

生活相談員の専門性は、「ソーシャルワークの価値」を基盤として成り立っているのです

それでは「ソーシャルワーク専門職の土台」について理解が深まったところで、生活相談員に必要な対人援助の基礎5つお伝えしていきます。

利用者(本人)本位の視点

特養やデイサービスなど、生活の場における事業所では、多職種が連携して介護を行っています。

看護職員や介護職員なども同じ専門職ですが、同時に個性を持ち合わせた人であることを忘れてはいけません。

最初は「本人の気持ちに寄り添って」と考えながら業務を行っていても、忙しい毎日を送っているうちに、多職種の個性に影響を受けて流され、本人の気持ちが反映されていない支援になってしまうことがあります。

また、いつの間にか自分の業務を効率的に終えたいと優先してしまうこともあります。

特に業務が立て込んでくると、イライラした感情が「態度」に出てしまいがちであることから、注意が必要です。

ここで、介護保険の基本的な考え方を3つ紹介します。

図1 介護保険制度の基本的な考え方

「利用者(本人)本位」とは、「自己選択・自己決定」のことです。

つまり、自分で生活についての支援方法や必要なサービス内容を選び、自分がどのように生活するのかを決めるということです。

生活相談員には「利用者(本人)の伴走者」としての役割が求められてきます。

「自己選択・自己決定」を表面的に解釈すると「自分で決めてください」「自分で決めたんだから仕方がないよね」といった「自己責任」を突きつけたような関係になってしまう可能性があります。

利用者(本人)のなかには、様々な要望がありますが、生活相談員の基本姿勢(スタンス)としては、利用者(本人)の最善の利益を検討します。

自らの価値観を優先するのではなく、利用者(本人)の価値を最優先することを考え、業務を展開していく必要があります。

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自己覚知力

みなさんは、自分の内面について、どのくらい把握できていますか?

人は自分の内面(自己理解)について、4つの窓を持っていると言われています。

自分の性格や気持ち、思考の癖を知ることは、他者を理解するうえでも重要です。

下記の図にある「ジョハリの4つの窓」は、「自分の内面には知っている部分もあれば、知らない部分もある」ということを分かりやすく説いている考え方です。

このように対人援助職は、「盲点の窓」である「自分では気づいていない自己」を「自己覚知」することが大切です。

生活相談員が行う相談援助では、様々な方と向き合い、相手を受容・共感することが求められます。

利用者(本人)を理解するプロセスにおいて、生活相談員自身の価値観や偏見で相手を見ないようにしなければ、真に相手を捉えることなどできません。

「自分自身の考え方の癖や傾向」「受け入れがたい考えや状況」などを日頃からしっかりと把握し、相談援助で抱く感情を冷静に意識しながら、俯瞰して関わっていくことが求められます

たとえば、お風呂が大好きな生活相談員が、利用者(本人)を入浴に誘うも、とても不機嫌な表情で「入りたくない」と断ったとします。

この場面で、「風呂に入りたくないなんて不潔な人だ」と捉えるか、「利用者(本人)が何らかの理由で選択したこと」と解釈するかは、生活相談員の意識の向け方によって変化してくると言えます。

自分自身の価値観を排除し、相手の価値観をありのまま受け止めることが大切です。

また「自己覚知」は、自分自身と改めて向き合うことで自分を客観視したり、俯瞰的に捉えたりするきっかけになります。

「他者から見た自分とは、いったいどのような人間なのか」を認知する思考を「メタ認知」ともいいます

客観的に自分自身を捉えることができることは、ソーシャルワーク専門職として、とても大切な力であり、利用者(本人)との相談場面を振り返り、内省する際にも必要となる力です。

日頃から自分自身と対峙する習慣を持つことで、「自己覚知力」が高まっていくでしょう。

傾聴力

生活相談員の業務の多くは、他者と向きあう対人援助です。

業務を行うためには、利用者(本人)や家族の想いを聴くこと(傾聴)が、なによりも大切になってきます。

「ただ人の話を聴くことぐらい誰だってできる」と思う方も少なくないでしょう。しかし、「傾聴」とは、ただ人の話を聴くという訳ではありません。

人にはそれぞれの価値観があるため、時には対話のなかで自分の価値観や考えとはまったく正反対の内容を告げられることもあります。

そこで、もしみなさんが相手を批判したり、否定したりするような「態度」を見せれば、そこで会話は途切れ、その後の相談業務に大きく影響を及ぼします。「傾聴」とは、ただ耳で聴くだけではなく、目・身体(姿勢)・心(意識)を相手に傾け、相手が話している内容を真摯な姿勢で受け止めることを言います。

利用者(本人)や家族と信頼関係(ラポール)を形成するうえで、大切な対人援助技術(スキル)です。

受容と共感的態度

受容

「受容」とは「受け止める」ことです。

利用者(本人)や家族は、長い人生において、様々な体験を重ね、それぞれの価値観やライフスタイルを背景とした、独自の人格(パーソナリティ)を持っています。

「受容」とは、「性格」「強いところ・弱いところ」「できること・できないこと」「好ましい言動や行動・好ましくない言動や行動」など、すべてについて、ありのままを受け止めようとする姿勢です。

自分の価値観や理にかなった納得できる言動や行動であれば、容易に受け止めることができるでしょう。

しかし、自分の価値観から逸脱している言動や行動を受け止めることは、とても難しいことです。もっと言うなら、まるで、その言動や行動を容認しているかのようにも感じてしまうのです。

利用者(本人)や家族の尊厳を守り、敬意を持って向き合い、相手を真に理解しようとする姿勢ことが「受容」であると言えます。

共感

「共感」とは、利用者(本人)がうれしそうにしている時は共に喜び、利用者(本人)が悲しそうにしている時は悲しむというように、相手の感情を受け止めて同調することです。

生活相談員は、利用者(本人)がこれまでの生活を振り返り、辛い経験や生きづらさなどを話してくれた時、相手の抱く感情を自分のことのように、深く理解しようとする姿勢が求められます。

ただ単に聴くだけよりも、「とても喜ばしい出来事ですね」「それはとても辛い経験ですね」などと言葉に出すことで、相手に対し「共感」が伝わりやすくなります。

利用者(本人)・家族にとっては、自分の辛い心情を分かろうとしてくれる生活相談員の姿勢に対し「この人になら、今後も相談して良いかも」と感じて貰いやすくなるのです。

ソーシャルワーク専門職のグローバル定義の理解

最後の基礎は「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」の理解です

「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」とは、国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)が定めたもので、全世界からソーシャルワーカーの団体が加盟し、議論の積み重ねから定められた「ソーシャルワーク専門職の国際的な定義」と言えるものです。

生活相談員にとって、重要だと思われる部分が下記の内容となります。

ソーシャルワークは、社会改革と社会開発、社会的結束、およびエンパワメントと開放を促進する、実践に基づいた専門職であり学問である。社会正義、人権、集団的責任、および多様性尊重の諸原理は、ソーシャルワークの中核をなす。ソーシャルワークの理論、社会科学、人文学、および地域・民族固有の知を基盤として、ソーシャルワークは、生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう、人々やさまざまな構造に働きかける。

ソーシャルワーク専門職のグローバル定義(一部抜粋)

とにかく私たち介護の現場では、人材不足により業務に追われていることから、目の前の利用者(本人)への対応方法に焦点が当たりすぎる傾向があります。

目の前の利用者(本人)への対応と同時に、他の利用者に対する普遍化した方法に変換するなど、介護の現場から距離を置き、客観視できる視点が求められます

介護の現場を通して経験的に学び、内省しながら気づきを得ながら改善し、積み重ねていく実践こそがソーシャルワークであるということです。

実践のみでも、机上論のみでも偏りが出てしまいます。実践と机上論(学問)は、車の車輪のようなものと言えるでしょう。

また、「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」の項目には、下記のような一文があります。

ソーシャルワークは、できる限り「人々のために」ではなく、「人々とともに」働くという考え方をとる。

この一文からは、生活相談員が1人で利用者(本人)の課題を解決するということではないと分かります。

また、ソーシャルワークは、生活相談員が利用者(本人)に対して、一方的に行うことで解決することでもありません。

つまり、利用者(本人)自身も支援者とともに歩むことが大切であり、生活相談員は伴走者として関わることが大切だと示されています。

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まとめ

「利用者(本人)本位の視点」「自己覚知力」「傾聴力」「受容と共感的態度」「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義の理解」は、どれもすべて生活相談員に必要な「対人援助の基礎」となります。

これらの基礎に磨きをかけることが、優れた生活相談員に近づく第一歩なのです。

生活相談員の専門性は、「ソーシャルワークの価値」を基盤に成り立っていることをしっかりと意識し、実践していきましょう。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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