みなさんどうもこんにちは。
元介護士で、現役ソーシャルワーカー×心理師の「てんぱまる@tenpa_mal」です。
みなさんは生活相談員の仕事に、どのようなイメージをお持ちでしょうか。
生活相談員に限らず、福祉の仕事は「人の役に立てた」と感じることができるとても素晴らしい仕事です。
その一方で、高い志を持って福祉の仕事(その中で生活相談員という職種)を選んだとしても、その現実を知り、心が折れかけてしまうケースは少なくありません。
理想と現実のギャップに打ちのめされ、「二度と働きたくない」と思われてしまうことは、福祉に携わる者として、とてもつらいことです。
この記事では、わたしが実際に生活相談員として働いてきた中で感じた「理想と現実のギャップ」について、お伝えします。
これから生活相談員を目指す学生や、キャリアチェンジを考えている介護職のみなさんにとって、とても役に立つ内容になっています。
困っている人をすべて助けることはできない
生活相談員を目指す動機は人それぞれですが、この仕事を選ぶ人の多くは「困っている人を助けたい」という気持ちを持っていることでしょう。
しかし、いくらこのような気持ちを強く持とうとも、「困っている人をすべて助けることはできない」というのが現実です。
その理由は、たとえどんなにその人を助けたいと思っても、みなさんが所属する組織、すなわち施設(事業所)において「受け入れが困難であること」を伝えなければいけない場面があるからです。
それでは、事例を挙げてご説明します。
しかし、Aさんは複数の事業所(デイサービスやショートステイ)から利用停止を受けています。
施設入所を受け入れたところで、行動・心理症状により、他の利用者や施設スタッフの迷惑になることは目に見えています。
つまり、Aさん1人を引き受けることで、その周辺で関わる大勢の方がつらい気持ちになり、被害を被ることになるわけです。
いくらみなさんが「助けたい」という気持ちになったとしても、施設(事業所)として軽はずみな返答はできません。
「個人の利益より、施設(事業所)全体の利益を優先しなければならない」のが、生活相談員のつらいところです。
生活相談員は介護職とは違い、相談者と直接顔を合わせているため、頭では理解していても、相談者に感情移入してしまう場面が多くあります。
しかし、このような行動・心理症状で他害が想定される事例においては、施設(事業所)として「受け入れは難しい」と断らざるを得ません。
特養という施設は「終のすみか」と呼ばれ、最期まで生ききる場所です。
すなわち、居室が空く正確な時期など、誰にも予測などできません。
よって、上記の事例以外でも、緊急性のある入所相談の多くは、すぐに解決(施設に入所できる)することができず、他の関係機関や専門職へリファー(紹介)することになります。
上記のような理由でリファーすることが続くと、「困った人を助けるために仕事をしてるはずなのに・・・」「なぜ目の前で困っている人を助けられないんだろう」といった気持ちになり、自分の無力さを思い知らされます。
生活相談員は施設の窓口である以上、このような場面の矢面に立たされ、「施設で受け入れできない方は断る」という立場から逃れることはできないのです。
ただし、医療に関する問題や認知症の行動・心理症状は、治療やケアなどによって改善することがあります。
よって、厳密に言うならば「入所できない」ではなく、「今は入所できない」ということになるため、施設の入所申し込み自体は断る必要はありません。
頭ごなしに断るのではなく、相談者の話をしっかりと受け止めましょう。
そして、抱えている悩みや苦労を共感したうえで、「なぜ、今は施設(事業所)で受け入れができないのか」を明確にお伝えすることが必要となります。
生活相談員の丁寧な対応は、自身の価値を高めるだけではなく、施設の風評やイメージアップに繋がる効果にも繋がります。
相手を不幸にしてしまうこともある
福祉の仕事には「人を幸せにできる」といったイメージがある一方で、時には「相手を不幸にしてしまう」こともあります。
代表的な事例を挙げるとすれば、それはやはり、入所中の事故などにより、利用者にケガをさせてしまうことです。
骨のもろい高齢者は、軽くぶつけたり転んだりするだけで骨折する場合があり、手術が必要ともなれば、病院へ入院になります。
手術で入院以前の状態に戻れることもありますが、手術が成功しても筋力が戻らず、寝たきり状態となってしまうことも多いのです。
また、環境の変化により、認知症の行動・心理症状が強く出現するなど、高齢者にとっての入院は、必ずしも良い効果に繋がるわけではありません。
このように、利用者や家族を「幸せにする」ために介護サービスを利用していただいた(入所した)にも関わらず「不幸にしてしまう」といった真逆の結果になってしまうことがあるのも現実です。
生活相談員は施設(事業所)の窓口ですから、このような事故の場面において、施設の代表として利用者や家族と直接対話していくことになります。
「どうしてこんなことになってしまったのだろう」「こんなことになるなら入所させるべきではなかった」といったような、利用者や家族のネガティブな感情(不安・悲しみ・怒り・憤りなど)を受け止め、直接対話することは、とても強いストレスとなります。
さらにつらいのは、このような事故は完全に防ぐことができないということです。
どんなにケアの質を高めても、リスクを0(ゼロ)にはできないのです。
健常者でも転んだり怪我をすることはあるでしょう。
ましてや相手は、筋力や認知能力の低下した高齢者です。
事故や怪我を100%防ぐとすれば、動けないように身体拘束でもしない限り不可能です。
もちろん身体拘束は、生活の場における施設(事業所)において行うべきケアではないわけで、現実的な対策ではありません。
つまり、生活相談員という立場で仕事をしている以上、利用者や家族のネガティブな感情と向き合うことは避けられないのです。
感情的になった家族から「お前たちのせいだ!」「責任をとれ!」などと、大声で怒鳴られる場面もありました。
涙を流しながら悲しみに暮れている家族を目の前にし、かける言葉も見つからないといった場面も経験しています。
このようなネガティブな感情と向き合う経験は、何度経験しても慣れるものではありません。
その都度無力感にさいなまれ、心には強いダメージを負います。
個人ではなくチームであることの意識
これまでお伝えした通り、生活相談員は家族と直接対話する場面で心に強いダメージを負い、精神的に支障を来すことがあります。
「2度と立ち直れない」といった最悪の事態を防ぐためには、本人や家族から受けたネガティブな感情について、施設長(管理者)を含めた多職種と共有すると良いでしょう。
決して一人で抱え込んではいけません。
直接対話した時の状況や家族から受けた言葉について、その都度細やかに共有することをお勧めします。
なぜなら、「現時点の判断に誤りはないかの確認」や「今後の手順や方法のアドバイス」を貰うことができるからです。
また、一人で進めて視野が狭くなり、判断を誤ってしまう可能性を減らすことができます。
さらには、「個人ではなく組織」として対応することの意識づけにもなります。
特に「家族の気持ちが収まらないケース 」においては、組織的な対応で多職種と協働・連携するよう心掛けましょう。
これから生活相談員を目指す全ての人へ
いかがでしたか?生活相談員の現実を知り、「こんなに大変なのか」「こんなにつらい仕事ならやりたくない」と思われた方も多いはずです。
しかし、利用者や家族からのネガティブな感情に触れた際に、「何も感じない」「全然平気」といった感受性の低い方は、生活相談員の仕事は向いていないかもしれません。
生活相談員はモノを作る仕事ではなく、対人援助職です。
よって、相手の感情を受け入れ、共感することができなければ、この仕事は務まりません。
逆説的になりますが、利用者や家族のネガティブな感情に共感し、寄り添うことができる方こそ、生活相談員として活躍する資質があるのではないでしょうか。
生活相談員は理想と現実のジレンマを抱えながらも、「人の役に立てた」と感じる機会の多い素晴らしい職種です。
この記事を通して生活相談員の理想と現実について理解を深め、みなさんのキャリア形成に活かして欲しいと願います。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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