認知症だからと決めつけない!意思決定する力を評価する手順と方法

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てんぱまる
この記事の著者
業界20年目になる特養の施設長。

看取りとグリーフケアの経験を重ねる。
地域密着型サービス外部評価調査員・実務者研修講師・大学非常勤講師としても活動中。

マルチーズが大好き。

【保有資格】
社会福祉士・介護福祉士・保育士・幼稚園教諭二種免許状・公認心理師・第一種衛生管理者・主任介護支援専門員
てんぱまる
てんぱまる

みなさんどうもこんにちは。

元介護士で、現役ソーシャルワーカー×心理師の「てんぱまる@tenpa_mal」です。

みなさんは日々の治療やケアにおける意思決定支援において、「本人の意思だけで決めても良いのだろうか?」と不安になる場面はありませんか?

特に認知症高齢者の意思決定支援においては、「質問の意味が理解できているのか曖昧」「日によって話す内容が違う」など悩む場面は多くあるでしょう。

今回の記事では、「意思決定する力を評価する手順と方法」について、詳しくお伝えしていきます。

この記事を読むことで、「本人の意思決定する力を評価するポイント」が明確になります。

また、本人の印象や雰囲気だけで「意思決定する力が欠如している」と間違えて判断してしまうことを防ぎ、より良い意思決定支援に繋げることができる内容となっています。

最後までご覧ください。

目次

結論

まず結論からお伝えすると、「意思決定する力を評価する手順と方法」を的確に実践するためには、下記の「意思決定する力を構成する4つの要素」について、正しい共通理解が必要となります。

参考:令和3年度厚生労働省委託事業 人生の最終段階における医療・ケア体制整備事業 E-FILD(Education For Implementing End-of-Life Discussion)

本人との話し合いにおける情報提供や質問を通して、これら4つの要素について注意深く観察し、評価することが求められるのです。

意思決定する力を慎重に評価すべき場面

まずは「意思決定する力を慎重に評価すべき場面」について、整理してみましょう。

一番想定しやすいのは、医療機関や施設等における治療・ケアにおいて、話し合いの内容が複雑な場面でしょう。

複雑であればあるほど、意思決定する力に高いレベルが求められます。

特に医療機関における治療方針に対する意思決定の場面では、決定内容が深刻な結果をもたらす可能性があります。

さらに、本人と支援者(評価者)との間で利害関係がある場合には、より慎重に意思決定する力の評価を行う必要があります。

表明する決定内容が相手(家族・友人・専門職など)によって異なったり、意思決定する力の評価内容が支援者の間で異なることも想定し、「なぜ、意思表明が異なるのか?」を掘り下げて考えていかねばなりません。

意思決定する力を評価する際の注意点

意思決定する力を評価する際には、いくつか注意する点があります。

わかりやすくまとめたものが下記の通りです。

  • 認知機能の低下や精神疾患の既往だけで、意思決定する力の欠如を判定してはならない
  • 年齢、病名、外見、行動、社会背景から判定されるものではない求められる
  • 意思決定する力のレベルは、状況や内容によって異なる周囲からみて不合理な選択だからといって「意思決定能力がない」と判断してはならない
  • 評価者には「意思決定能力がない」ことを証明する責任がある
  • 十分な意思検定支援のうえによる評価が大前提
  • 評価の前に意思決定する力を高める

支援するイメージと照らし合わせ、しっかりと把握しておきましょう。

意思決定する力を高める支援

上記の注意点はすべて重要ですが、その中でも特に重要なものが「評価の前に意思決定する力を高める」ことです。

では、具体的に整理していきましょう。

情報開示の工夫

病状や治療・ケアの説明は一度で終えるのではなく、複数回行うことが求められます。

分かりにくい医療用語や専門用語を避け、「ゆっくり」「はっきり」と伝えることも必要です。

口頭による説明だけではなく、文章や図を用いることも効果的です。

場の設定

医療機関や施設内において、落ち着いて話せる場所(環境)を準備することが求められます。

また、プライバシーが確保された空間で話すことも必要になります。

さらに、本人の家族や友人などに同席してもらうことも選択肢の1つになります。

心理的サポートによる不安や恐怖の緩和

話し合いの内容が複雑であったり、決定内容が深刻な結果をもたらす可能性がある意思決定には、不安や恐怖が伴います。

このような場合は、意思決定の場面に臨む前の心理的サポートとして、専門職(臨床心理士・公認心理師など)によるカウンセリングが効果的です。

また、うつ病・依存症・統合失調症などの精神疾患を抱え、服薬治療を行っている方に対しては、一次的な薬剤調整が必要になることもあるでしょう。

質問の機会と熟考する時間の確保

意思決定支援においては、こちらからの一方的な情報開示に留めてはいけません。

本人に対して、必ず質問する機会を与えましょう

またゆっくりと考える時間を提供し、意思決定を急かすような言動は控えることが求められます。

しかし深刻な疾患を抱え、治療を急がなければいけない場合においては、とても難しい支援となります。

意思決定する力を評価する手順と方法

ここからは本題の「意思決定する力を評価する手順と方法」について解説していきます。

おおまかな手順と方法は下記の通りです。

手順と方法
  1. 情報開示話し合いの中で必要な情報を伝える
    • 病名、病因、兆候、症状、経過
    • 治療しない場合に予想される経過
    • 推奨される治療・ケア:医学的にみて最善と思われるもの
    • 代替となる治療・ケア
    • それぞれの治療・ケアに伴う負担やデメリット
    • その他の重要事項
  2. インタビュー質問しながら説明を補足する(発言や回答内容から評価する)
    • 開かれた質問(例:「先生からどのように説明を受けたか、内容について教えてください」など)
    • 閉じた質問(例:「病名の説明は受けましたか?」「治療・ケアに伴う負担やデメリットは分かりましたか?」など
    • 誤解がある場合には再度説明し、質問する
  3. 記録本人の回答内容を記録する
    • 多職種で内容を共有する

このように「インタビュー」の場面を用いて、質問に対する発言・回答内容から意思決定する力を評価していく必要があります。

しかし評価するとしても、支援者(評価者)が評価する要点を共通理解していなければ、その評価は意味をなしません

だからこそ「意思決定する力を構成する4つの要素」について、正しい共通理解が求められるのです

意思決定する力を構成する4つの要素

では評価の質を左右する「4つの要素」について、「質問の例」「評価のポイント」を交えながら詳しく説明していきます。

参考:令和3年度厚生労働省委託事業 人生の最終段階における医療・ケア体制整備事業 E-FILD(Education For Implementing End-of-Life Discussion)

1.理解

理解とは「意思決定のために必要な事項を理解しているか」といった要素です。

質問の例
  • どのような治療・ケアが必要だと説明を受けましたか?
  • あなたの病名はなんですか?
  • 今どのような症状がありますか?  など
評価のポイント
  • 病気の内容(病名・病状・病気など)
  • 提案された治療と代替案の内容・それらの利益(効果など)と負担(副作用など)
  • 上記内容について、本人の言葉で答えられるかどうか

2.認識

認識とは「病気・治療・ケア・意思決定を自分自身の問題として捉えているか」といった要素です。

質問の例
  • 今回の病気や症状で、どのようなことに困っていますか?
  • どのような治療・ケアを希望しますか?
  • その理由も教えていただけますか?  など
評価のポイント
  • 病気や症状の存在を自覚し、治療・ケアや意思決定の必要性を自分のこととして捉えている
  • 提案された治療・ケアの方針が自分の健康に利益をもたらすと理解している
  • 「理解」と「認識」はよく混同されがちな要素

    理解は「情報自体を理解する能力」認識は「自分ごととして情報を適用する能力」というように、しっかりと区別して理解しましょう。

3.論理的思考

論理的思考とは「決定内容は選択肢の比較や自分自身の価値判断に基づいているか」といった要素です。

質問の例
  • 説明した治療・ケアの中でどれが最も良いですか?
  • その理由も教えていただけますか? 
  • あなたが選択した方針は、生活にどのような影響があると思いますか?  など
評価のポイント
  • 選択肢が自分に与えうる利益と不利益とのバランスをとりながら、自己査定している
  • 選択が日常に与える影響について述べれる
  • 選択の内容は一貫している
  • 選択は本人自身の推論に基づいている

    不合理(目的に合っていない)であっても、論理的(筋道を立てて考える)であれば、論理的思考は「ある」と考えます

4.表明

表明とは「自分の考えや結論を伝える」といった要素です。

評価のポイント
  • 口頭で返答する必要はなく、書面や他者を介した伝達でもよい
  • 提示された選択肢の中から、特定のものを選ぶことができる
  • 非言語(表情・指さし・アイコンタクト・首振りなど)で伝達できる
  • すでに他者へ選択を依頼している

    「どちらでもいい」は表明であるが、「なぜどちらでもよいのか?」が表明される必要があります

評価する際に注意すること

本人の意向を尊重しながら良い結果と好ましくない結果の比較し、危険な結果から保護するなどバランスのとれた評価が求められます。

また、「各要素が著しく欠如している場合」「本人の思考に論理性がなく、本人によって不利益であることが明らかな場合」は、本人の推定意思を尊重したり、本人に代わる者として家族等と最善の方針に関する見当を行う必要があります。

さらにどうしても評価が困難な場合には、精神科医等の専門家にコンサルテーションします。

つまり、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に沿ったかたちで「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)」を行うことが重要なのです。

「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)」とは、もしもの時のために、人生の最終段階について家族等や医療・ケアチームと本人が、望む医療やケアについて前もって考え、繰り返し話し合うプロセスのことであり、厚生労働省により普及・啓発されています。

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人生を生ききる支援とは?人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)とこれからの看取り | こころフ... てんぱまる みなさんどうもこんにちは。元介護士で、現役ソーシャルワーカー×心理師の「てんぱまる@tenpa_mal」です。 死に自信をもって関わることができる方は多くありま...

まとめ

意思決定する力の評価は、「年齢」「病名」「社会的背景」などから憶測で行われるものではありません。

ましてや「認知症で物忘れが多いから意思決定能力はない」と決めつけることは、あってはならないことです。

「本人のもつ能力を最大限高めてから評価する工夫」や「本人の発言・質問に対する回答から評価する」といったプロセスが重要なのです。

この記事をきっかけに「意思決定する力を評価する手順と方法」について理解を深め、より良い意思決定支援に繋げていただけると幸いです。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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