- 国家資格とは、どんな資格なの?
- 公的資格と民間資格の違いは何?
- 記事によって定義や分類が違うのは、どうして?
- どうせ取得するなら、国家資格のほうがいいの?
- 結局、どの資格を取るのが良いの?
これから資格の取得しようと考えているみなさんのなかにも、上記のような疑問・悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
今回の記事では、「国家資格」「公的資格」「民間資格」について、それぞれの定義や分類の要点をわかりやすく解説します。
みなさんがこれから目指す資格取得に向けて、参考となる内容ばかりです。
ぜひ最後まで、ご覧ください。
【結論】法律上の明確な定義はない
まず結論からお伝えすると、「国家資格」「公的資格」「民間資格」という言葉は、一般的によく使われている言葉であるものの、法令上の明確な定義はありません。
この記事以外でも、資格の種類や内容を紹介しているサイト・ブログ等は多数存在しています。
しかし、そのサイト・ブログによって定義が異なっていたり、資格の種類によって分類が不明瞭であったりと、すべてで共通するものではありません。
ぼく自身も、このブログで記事にするまでは、「なんとなく」で使い分けていたなぁ……
そこで、資格を紹介するブログとして、各資格の定義や分類の要点についてわかりやすくまとめたものが必要だと考え、まとめた結果が下記の内容です。
※この記事で記載している各資格の定義や分類の要点は、必ずしも法律上の公式な定義・分類ではなく、行政資料・公開情報等を参照した結果をもとに、このブログ上で独自に解釈したものであるということをご留意ください。
資格の定義と分類の要点
それではさっそく、「国家資格」「公的資格」「民間資格」の順で、それぞれの定義と分類の要点について、確認していきましょう。
以下より、「資格」以外の「免許」「検定」なども含め、「試験等により一定の知識・技能を証明するもの」を総じて「資格」と整理して表記します。
1.国家資格
「国家資格」の定義について、確認していきます。
行政等による定義
「国家資格」は文部科学省のホームページにおいて、下記のとおり定義されています。
国家資格とは、国の法律に基づいて、各種分野における個人の能力、知識が判定され、特定の職業に従事すると証明される資格。法律によって一定の社会的地位が保証されるので、社会からの信頼性は高い。
文部科学省「国家資格の概要について」
また、労働に関する総合的な調査研究を実施する「独立行政法人である労働政策研究・研修機構(以下JILPT)」では、「国家資格」を下記の通り定義しています。
①国家資格
独立行政法人労働製作研究・研修機構「労働政策研究報告書 №121-1 我が国における職業に関する資格の分析-Web免許資格調査から-(第1分冊)」p53~54
法令や条例にもとづいて国や自治体が実施・認定する資格。
さらに「中央教育審議会」では、下記の通り定義されています。
「国家資格」は,法令等に基づき,国,地方公共団体又はそれに準ずる機関が試験を実施するものであり,弁護士,公認会計士等が該当する。
中央教育審議会生涯学習分科会(第20回)-資料3:資格について
文部科学省・JILPT・中央教育審議会と、それぞれで定義が違うのが困ります……
国家資格の定義となる4つの要素
これらの内容から、「国家資格」の定義には「根拠」「認定主体」「試験実施機関」「全国一律の基準で認定されているか」といった4つの要素が含まれていることがわかります。
では続いて、4つの要素について、1つずつ確認していきます。
1.根拠
すべての内容で共通している点は、「国の法律に基づいて」「法令や条例に基づいて」「法令等に基づいて」という部分になります。
例えば、福祉・介護分野で代表的な国家資格である介護福祉士は、「社会福祉士及び介護福祉士法」において、その使命・業務・資格・試験などが明確に定められています。
つまり国家資格には、何らかの法令上に根拠が求められているということがわかります。
なお機関によって、「国家資格」の根拠として説明されている内容(「国の法律」・「法令や条例」「法令等」)も異なることもわかります。
しかし、「国家資格」という名称から考えると、地方自治体が規定する「条例」を根拠とする資格については、「国家資格」に含めるべきではないと考えることができます。
例えば、条例に基づく資格の代表例として「ふぐ調理師」がありますが、一般的には「公的資格」であると整理されています。
また「法律」以外に、内閣や省庁の命令である「政令」「省令」なども根拠として認められるかといった論点も浮かんできますが、「政令」「省令」は法律を施行するために定められるため、法律と区別して考える必要性は低いと考えられます。
よって、「政令」「省令」等の国の行政立法で規定されている資格についても、「国家資格」に含めるべきだと言えるでしょう。
2.認定主体
JILPTの定義では、設置主体が「国や自治体が実施・認定する資格」とされていますが、「『自治体(=地方公共団体)』によって認定される場合を国家資格に含めるか」が論点となります。
この論点のポイントは、「国の『法令』に根拠がある場合は、その資格自体は国から認められたものである」ということです。
仮にその認定主体が都道府県知事などの地方公共団体であっても、それは事務・運営の都合上、国から地方公共団体に委託されているということであり、「国家資格」であるということを否定する理由になりません。
「法令」を根拠とする資格の中にも、都道府県知事認定の資格がたくさん存在します。
福祉・介護業界で代表的なものとしては、栄養士、保育士などが挙げられますが、これらはいずれも「国家資格」として一般的に認識されているかと思います。
以上のことから、認定主体が都道府県知事などの地方公共団体である場合にも、国の「法令」に根拠がある場合には「国家資格」に分類されるということになります。
3.試験実施機関
中央教育審議会の定義では、「国、地方公共団体又はそれに準ずる機関が試験を実施するもの」という定義が含まれています。
「国以外の団体が試験実施機関となっている資格を『国家資格』に含めるか」が論点となりますが、そもそも法令上に規定のあるほとんどの資格では、公益法人等の団体が試験実施機関に指定されています。
例えば、国家資格とされている「社会福祉士」については、「公益財団法人 社会福祉振興・試験センター」が試験事務を行う指定試験機関とされています。
つまり、試験実施機関に関わらず、(試験実施機関が公益法人や民間団体の場合でも)国の法令等に基づいて認定が行われる資格であれば「国家資格」に該当すると考えられます。
4.全国一律の基準で認定されているか
「国家資格」であるか否かの判断基準として、「全国一律の基準で認定されているか」という点はとても重要です。
全国一律の基準で実施されていない資格の例として、上述した「ふぐ調理師」「介護支援専門員」などが挙げられます。
※どちらも一般的には「公的資格」とされています。
「ふぐ調理師」は、各都道府県の条例等によって規定されており、試験内容や認定基準も各都道府県が独自に作成しています。
「介護支援専門員」は、介護保険法に規定されている資格ではありますが、その登録のために必要となる試験や研修は各都道府県が実施するものとされ、法律の規定上、各都道府県によって異なる試験・研修を実施することが可能となっています。
※ただし実態としては、公益財団法人社会福祉振興・試験センターが試験問題の作成及び合格基準の設定に関する事務を各都道府県から受託し、一律で行われています。
以上の通り「公的資格」に分類される2つの資格は、いずれも全国一律の基準で認定されていません。
つまり裏返すと、全国一律の基準で認定されている資格が「国家資格」に分類されるということになります。
>>福祉・介護の資格は取っても意味がない?目的やメリットから「資格を取る意味」を解説 ~ 資格の目的別一覧表付き ~
国家資格の定義
これまでの内容を整理すると、国家資格とは「国の法令に基づき、全国一律の基準で認定される資格」と定義することができます。
>>絶対に失敗しない!社会福祉士の通信講座を選ぶポイントとおすすめランキングTOP9
2.公的資格
「公的資格」とは、「何らかの公的性質を有する資格である」と考えるのが基本になります。
一方で、公的性質といっても多様な捉え方があり、一定の分類・整理を行わなければ、結局その定義が曖昧なままとなってしまいます。
そこで、下記6つの資格について、それぞれが「公的資格」に分類されるかどうかをひとつずつ確認していきたいと思います。
- 「民間技能審査事業認定制度」により国の認定を受けていた資格
- 商工会議所が実施・認定する資格
- 地方公共団体の条例に基づいて認定される資格
- 国の法令に基づいて認定されるが、認定基準が全国一律ではない資格
- 官公庁からの「後援」を受けている資格
- 国家資格の受験や国・地方公共団体での任用等において要件とされている資格
「公的資格」は、記載されているサイト・ブログごとに解釈や定義に一番差が見られる資格です。
1.「民間技能審査事業認定制度」により国の認定を受けていた資格
JILPTの資料では、「公的資格」について下記の通り定義されています。
②公的資格
独立行政法人労働製作研究・研修機構「労働政策研究報告書 №121-1 我が国における職業に関する資格の分析-Web免許資格調査から-(第1分冊)」p54
国の基準に基づいて民間事業認定制度により公益法人等が実施し国が認定する資格。規制改革により2005年までに原則として廃止され、民間資格(一部は国家資格)に移行した。
「民間事業認定制度(民間技能審査事業認定制度)」とは、「民間団体等が行っている技能審査事業について、国が奨励すべきものとして認定する制度」です。
つまり、各省庁からのお墨付きを得て、民間団体等が試験運営・認定を行っている資格ということになります。
※ここでの民間団体には各省庁所管の公益法人も含まれます。また、主に国(各省庁)の告示が認定の根拠となっています。
以前までは、「民間技能審査事業認定制度」において認定された資格はすべて「公的資格」と表現されていました。
「実用英語技能検定(英検)」などの資格も、「公的資格」に含まれていました。
>>中央教育審議会生涯学習分科会(第20回)「民間技能審査事業認定制度による資格一覧」
しかし90年代の規制緩和の流れで、民間技能審査事業認定制度で認められている「公的資格」の民間資格化(一部は国家資格化)が進み、2005年には同制度が廃止されています。
制度廃止後は、認定の代わりに省庁からの「後援」を受けて実施している資格(「実用英語技能検定」など)や、実施主体である公益法人等が独自事業として継続的に実施している資格(「健康運動指導士」など)などに形式を変えて、継続的な資格事業が運営されています。
>>規制行政に関する調査-資格制度等-結果に基づく勧告(要旨)
以上を踏まえると、「民間技能審査事業認定制度」の認定を受けて「公的資格」とみなされていた資格は、制度の廃止によって「公的資格」と呼ばれる根拠を失った状態であるということになります。
一方で、上記制度の廃止後も継続して「公的資格」であると説明されている資格は多数あり、制度の廃止には触れず、ただ単に「民間団体等が主催する資格で、国が認定したもの」等といった記事も多く見かけます。
以上の通り、かつて「民間技能審査事業認定制度」にて認定されていた資格が現在も「公的資格」に分類されるか否かについては、見解が分かれるところです。
「民間技能審査事業認定制度」の廃止以降、上述の通り形式を変えて公的性質を有している資格もあれば、公的性質を完全に失っている資格もあります。
かつて「民間技能審査事業認定制度」で認定されていた、ということ自体は「公的資格」としての根拠とはならず、現在の資格の状況を踏まえて分類すべきといえます。
2.商工会議所が実施・認定する資格
ビジネス系の資格・検定の中には、日本商工会議所や都道府県の商工会議所が主催する資格・検定試験があります。
「日商簿記」はその代表的な資格の一つです。
商工会議所によるWebサイトでは、以下のように説明されています。
商工会議所の検定試験は、「商工会議所法」という法律に基づいて、全国統一の基準により実施している「公的試験」です。
企業規模や業種、業態などに関係なく、ビジネス実務に直結する知識やスキルを重視し、企業が必要とする人材の育成を目的に実施しており、多くの企業から高い評価と信頼を得ています。
日本商工会議所・各地商工会議所「検定試験のご案内」
上記の通り商工会議所は、商工会議所法第9条第1項第9号にて、「商工業に関する技術又は技能の普及又は検定を行うこと」を事業として実施できる旨の規定があります。
「法律上の規定をもとに行われている」という意味において、商工会議所が実施する検定は公的性質を有するといえるため、「公的資格」に分類されると考えられます。
一般的にも、「日商簿記」をはじめとする商工会議所が実施する検定試験は、「公的資格」に分類される場合が多数を占めます。
ただし、商工会議所が実施・認定する検定は、法律上でその検定の趣旨や効力などを規定されているわけではないため、「国家資格」のように業務独占の効力を持つものはありません。
あくまで、ビジネス実務で要求される知識やスキルを習得し、それを対外的に証明することを主眼に置いた検定になります。
>>日本商工会議所・各地商工会議所「商工会議所の検定試験」
3.地方公共団体の条例に基づいて認定される資格
前段でも記載した通り、地方公共団体による条例を根拠とする資格は、「国家資格」に該当しません。
一方で、地方公共団体の条例は公的性質を有するものであり、その条例をもとに実施・認定されている資格については、「公的資格」に分類されると考えられます。
商工会議所が実施する検定試験とは異なり、条例上に資格の定義や効力が規定されているため、業務独占資格や名称独占資格も存在します。
4.国の法令に基づいて認定されるが、全国一律の基準で認定されていない資格
こちらも前段で記載した通り、「国の法令に基づいて認定されるが、全国一律の基準で認定されていない資格」については、「国家資格」には該当しません。
しかし、法令等に基づいているという公的性質から「公的資格」に分類されます。
5.官公庁からの「後援」を受けている資格
「公的資格」であるか否かが問題となるものとして、文部科学省などの国の省庁から「後援」を受けている資格が挙げられます。
例えば文部科学省は、下記の条件で「後援」を受けることが可能となっています。
文部科学省では、団体等が主催する各種の行事等が、当省の推進する施策と密接に関連し、積極的に後援すべきと認められる場合には、主催者からの申請に基づき、文部科学省後援名義や文部科学大臣賞(以下「後援名義等」という。)の使用を許可しています。
文部科学省「文部科学省後援名義等の使用許可申請について」
「後援」とは、官公庁や地方公共団体が主催する各種の行事等に対して、その名義の使用を許可することを指し、金銭や人的な支援は原則として行われません。
また「後援」を受ける資格は、いずれも公益法人・民間団体が主催するものであり、その認定や試験・基準の作成には国・地方公共団体は一切関与しません。
さらには、法令上の規定があるわけでもなく、業務独占や名称独占といった効力もありません。
上記を踏まえると、官公庁や地方公共団体から「後援」を受けている資格は、公的性質を有しているとは言えますが、他の「公的資格」と比較して、その根拠は非常に弱いと言えます。
一方で、「後援」を受けているだけの資格・検定でも「公的資格」に分類されている場合もあり、解釈が分かれる部分となります。
文部科学省からの後援を受けている資格・検定の一覧
>>文部科学省「文部科学省が後援している検定試験で学びたい!」
6.国家資格の受験や国・地方公共団体での任用等において要件とされている資格
公益法人・民間団体が実施する資格の中には、これまで解説した「国家資格」の分類では該当しないものの、その資格を保有していることが「国家資格」の受験要件となっていたり、国・地方公共団体に任用される際の資格要件となっていたりする場合があります。
例えば、「財団法人日本臨床心理士資格認定協会」が認定する「臨床心理士」は、文部科学省事業として学校への設置が推奨されている「スクールカウンセラー」の資格要件となっています。
>>文部科学省「教育相談等に関する調査研究協力者会議(第1回) 配付資料 資料6 「スクールカウンセラー」について」
また、「サーティファイ著作権検定委員会」が実施する「ビジネス著作権検定」の上級に合格すれば、国家試験である「知的財産管理技能検定2級」の受験資格が得られます。
>>知的財産教育協会「知的財産管理技能検定 受験資格」
上記のような「国家資格の受験や国・地方公共団体での任用等において要件とされている資格」については、一定の公的性質があると言えるため、「公的資格」に分類されるとも考えることもできます。
しかし、その資格自体は「公益法人・民間団体等が実施している資格」であるということに変わりはなく、国や地方公共団体は、その資格の認定や基準の作成等に直接の関わりはないことから、一般的に上記のような資格は、「民間資格」に分類されると言えます。
これらの内容から、「国家資格」の受験や国・地方公共団体での任用等において要件とされていても、それだけで「公的資格」に分類される根拠にはならないと考えられます。
>>福祉・介護の資格は取っても意味がない?目的やメリットから「資格を取る意味」を解説 ~ 資格の目的別一覧表付き ~
公的資格の定義
これまでの内容を整理すると、「公的資格」の定義は下記の通りとなります。
これまでの内容からもわかる通り、「公的資格」は定義がとても曖昧なままに使われています。
この記事では、わかりやすく分類を試みていますが、「『公的資格』が『民間資格』より重要で優れている資格である」ということではありません。
「公的資格」=「国・行政のお墨付きがある」と安易に考えず、資格としての認知度や認定団体などから、有用性・実用性を検討する必要があるでしょう。
3.民間資格
「民間資格」は、「国家資格」「公的資格」に該当しないもの、すなわち「公益法人・民間団体等が、法令等に基づかずに実施・認定する資格」を指します。
上記で紹介したJILPTの資料でも、以下の通り定義されています。
③民間資格
独立行政法人労働製作研究・研修機構「労働政策研究報告書 №121-1 我が国における職業に関する資格の分析-Web免許資格調査から-(第1分冊)」p54
公益法人等の各種団体や民間企業等が実施・認定する資格。
認定する団体の規模や性質も非常に多様ですが、すべて「民間資格」となります。
「国家資格」「公的資格」に該当しない資格については、基本的にすべて「民間資格」と整理されるため、「国家資格」や「公的資格」のように定義上で解釈が分かれる部分はありません。
民間資格の定義
これまでの内容を整理すると、「民間資格」の定義は下記の通りとなります。
【まとめ】自分のキャリアデザインに合わせて資格を考える
この記事では、「国家資格」「公的資格」「民間資格」の定義と分類の要点について、多様な資料を参考にしながら解説してきました。
しかし、資格の本質は「他者に自身の知識や技能の水準を証明すること」にあります。
繰り返しになりますが、「国家資格」「公的資格」「民間資格」という言葉は、一般的によく使われている言葉であるものの、法令上の明確な定義はないのです。
上記の定義や分類に捉われることなく、自分自身が理想とするキャリアにおいて、その資格が必要かどうか十分に考えたうえで、受験・取得を決める必要があります。
「国家資格だから、取得するべきだ」「公的資格は民間資格より重要で、優れている資格だ」ということではありません。
資格を取得すること自体が目的になってしまうと、自分の考えたような結果に繋がらなかった場合に「資格は意味がないもの」となってしまいます。
資格を取ることはあくまでも「手段」であり、理想や目標を達成するための一要素です。
みなさんがこれから目指す資格取得に向けて、参考となれば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。