
みなさんどうもこんにちは。
元介護士で、現役ソーシャルワーカー×心理師の「てんぱまる@tenpa_mal」です。
対人援助職として「最適な支援方法を見出せない」「支援方法が偏ってしまう」という悩みを抱えている方は多いと思います。
今回の記事では、ケアマネジャーをはじめとする対人援助職の「実践力が向上する考える力の磨き方」について、詳しくお伝えしていきます。
結論
結論からお伝えすると、実践力が向上する考える力の磨き方のポイントは下記の3つとなります。
- 「自分の頭と心」を働かせるための考え方の基礎を学び続ける。
- 考え続けることを通して、専門職としての思考を養う。
- 「考える力」と「寄り添う力」を同時並行で発揮する。
実践力向上の鍵は考え続けること
対人援助職に共通して必要な「内なる力」として、「利用者と利用者を取り巻く状況への理解を深め、考えをめぐらせる力」「その判断をもとに、より良い支援に向けて試行錯誤を繰り返す力」があげられます。
利用者と利用者を取り巻く状況への理解を深め、考えをめぐらせる力
その判断をもとに、より良い支援に向けて試行錯誤を繰り返す力
抽象的で少し分かりづらいかもしれません・・・。
要するに、必要な情報をつかんだ後は分析を行い、より精度の高い推測とその検証を繰り返しつつ、「最適な支援を導くための考え方」を身に着けることが求められるということです。
このような考えをめぐらせるプロセスは、「より妥当な判断に基づいた行動を可能にする循環のプロセス」であり、実践力向上のカギと言えます。
ただし、利用者と利用者を取り巻く状況への理解を深め、課題達成への見通しと支援方法を見出せるよう考えをめぐらせることは、そう簡単ではありません。
また考えたからといって、何か1つの正解が出てくるものでもありません。
対人援助職としての面接技法や、ケアマネジャーとしてのケアプランを作成する知識・技術だけではなく、そこで繰り返されている試行錯誤そのものの支え(土台)となる「知的作業」が大切になってきます。
だからこそ「考えをめぐらせ続ける」という姿勢が必要なのです。
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考え方の基礎を学び続け、専門職の思考を養う
現場では思い描いたようにならず、悩んだり苦しむことがあります。
ケアマネジャーをはじめとする対人援助職は、日々悩みや苦しみと向き合いながら、より適切な状況と対応ができるよう考えをはりめぐらせます。
その時に「思いつき」「勘」「経験」だけを頼りにするのではなく、前段でも記載したような「試行錯誤の過程を支える考え方(土台)」を身に着け、応用していくことが求められます。
精度の高い推測と検証をもとに、最適の支援方法と利用者のより良い変化への最短距離を見出していくとき、その考え方のバリエーションは様々です。
そして「利用者をめぐる情報の組み立て」「分析・推測ための捉え方の幅広さ」「うまく見当をつけること」が求められます。
そこで必要になるのが、考えをめぐらせるための土台となる様々な考え方の基礎を学ぶことです。
ケアマネジャーをはじめとする対人援助職が学ぶべきことは「医療」「介護」「法律」「精度」など、直接業務に関連する知識・情報だけに留まりません。
「利用者と利用者を取り巻く状況・環境(社会)の理解に関する考え方」「支援のあり方や方法の基礎となる考え方」など幅広い内容が含まれるのです。
- 利用者と利用者を取り巻く状況・環境(社会)の理解に関する考え方
- 支援のあり方や方法の基礎となる考え方
考え方が持てるようになると目の前の状況を俯瞰して捉え、整理と意味づけができるようになります。
また、人と環境に関わるメカニズムを理解したり、今後どのようなことが可能性として予測できるのかを考えるための視点や材料を示してくれます。
つまり「実践のなかで判断を助けるための物差しとなる拠りどころ」「迷ったときに立ち返ってさらに深い思考を行う道しるべ」になるということになります。
- 実践のなかで判断を助けるための物差しとなる拠りどころになる
- 迷ったときに立ち返ってさらに深い思考を行う道しるべになる
このような知識・理論と呼ばれるものは、考えをめぐらせる際の助けとして学び続ける必要があります。
もちろん、知識・理論を知り得たからといって、そのまま個々の利用者理解や支援にあてはめるのではありません。
これらの考え方の基礎を学ぶ際には「テクニック」や「ハウツー」などのやり方ではなく、知識や理論の「見方」「捉え方」「活かし方」を身に着けることが非常に重要となります。
つまり考えをめぐらせ、何かを理解して判断していく際には、「自分の頭と心を働かせるための土台(仕組み・視点)作りとして知識・理論を学ぶこと」が大切です。
「自分の頭と心」を働かせず、机上の知識・理論では何も役に立ちません。
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考え方の道筋は様々
それでは事例を通して理解を深めていきましょう。
Aさん夫婦は、長年夫婦二人で助け合って生活してきました。
心臓に持病のある夫(82歳:要支援1)は多少無理をしてでも、妻(78歳:要介護2)の排泄や外出を介助し、家事もこなしています。
現在、訪問介護(生活援助)を週1回利用中。
ケアマネジャーはデイサービスや福祉用具(介護用ベッドのレンタル)の利用を勧めるが、妻は「夫が助けてくれるから大丈夫」と話しています。
また、夫も妻を介助することにやりがいを感じているようで、「今はこのままでいい」との思いが強くあります。
簡単な事例ですが、状況を理解して判断(解釈)していく考え方の道筋はひとつではありません。
先にお伝えしたような、様々な考え方と照らし合わせ「〇〇ではないだろうか?」「××で良いのだろうか?」と自分の頭と心で自問を繰り返しながら、利用者との関わりのなかで検証を重ねていきます。
ケアマネジャーが勧めるサービス利用に対して、Aさん夫婦が消極的な理由・背景であることとして、色々な予測が思い浮かぶでしょう。
たとえば、「金銭的な不安がある」「他者から介護を受けることに抵抗がある」「車酔いする」などがあげられます。
長年支え合ってきたAさん夫婦の絆の強さを認めつつ、課題も含めた生活状況を様々な角度からトータル的に捉えます。
具体的な捉え方として、「今の状況は、Aさん夫婦の視点から見てどのように映っているのか」といったことを考える必要があります。
また、これからも夫婦で過ごしたいという思い(動機付け)を起点にしながら、「そのためには何が必要なのか」といったことに対して考えをめぐらせることも重要です。
すなわち、利用者理解と課題解決にむけた試行錯誤を続ける際に「ものの見方」「捉え方」を組み合わせて応用していくのです。
自分が情報を組み立て分析・統合するサイクルのなかに、人と環境への理解を深め、支援の意味づけ・方向づけの助けとなる様々な考え方(ものの見方・捉え方)を取り込んでおくことで、自分自身の考える力の土台が築かれます。
自分自身の考える力の土台作りこそが、「じっくり」「しっかり」と考え続けることに繋がります。
考える力と寄り添う力
「考えをめぐらせ続ける土台となる様々な考え方の基礎」を学ぶことの重要性について、お伝えしてきました。
しかし、利用者や利用者を取り巻く状況に関する情報を考え方にこじつけて、「わかったつもり」になることではありません。
利用者に関する情報を並列する項目に沿って多く集めるだけでは、実際に行われる支援の方向性や変化の可能性を見出すことは難しいでしょう。
つまり、情報を網羅して考え方をなぞるだけでは、利用者の理解・課題解決には繋がらないのです。
そこで、「考える力」とセットで重要になるのが利用者・家族に「寄り添う力」です。
考え続ける際の推測と検証は、「利用者との共同作業であること」が欠かせません。
支援者の単独では効果に繋がらないのです。
利用者との関係性を築き、利用者の状況や奥にある思いなどを受け止めながら、さらに理解を深めるための問いかけをします。
また利用者が抱いている考えや解釈の再検討、あるいは利用者自身も気づいていない力や強さのフィードバックを通して、利用者自身の気づき・決心を固めていく過程を支えます。
このようにして対人援助職は、「聞き取れたこと」「感じたこと」「明らかになってきたこと」などを頭の中で組み立て、それが利用者にとって妥当かどうかを再認識するといった共同で検証作業を繰り返します。
検証作業をわかりやすくしたものが、下記の図となります。

対人援助職として「じっくり」「しっかり」と考えることが専門職としての思考を磨くことに繋がります。
また「寄り添う力」として、利用者自身が課題達成に迎えるように「力添え」をしていくことが、非常に重要な実践力に繋がります。
つまり対人援助職には、利用者との関わりのなかで判断力を導く「考える力」と、自らの行動を支える「寄り添う力」を同時平行で連続的・継続的に発揮することが求められるのです。
まとめ
- 「自分の頭と心」を働かせるための考え方の基礎を学び続ける。
- 考え続けることを通して、専門職としての思考を養う。
- 「考える力」と「寄り添う力」を同時並行で発揮する。
対人援助職として実践力が向上する考えを磨くためには、上記3つのポイントをふまえながら、「考え続けること」が大切なのです。
「利用者本人や家族のナラティブ(ものがたり)を共同で再編集する思考と行動」にこそ専門性が表れると考えています。
この記事をきっかけに、みなさまの実践力向上に繋がることを期待します。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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